SSブログ

人生における労働の位置づけ 2 [日記・雑感]


スポンサードリンク

一つは、「消費者重視」と「労働者の権利」についての温度差だと思います。
「国民」は、子供や老人を別にすると、おおむねこの両面を兼ね備えています。収入を得る勤労の場では労働者ですし、生活に必要な支出をする場では消費者です。どちらもないがしろにできない大切な観点であることに異論はないと思います。
しかし、日本とヨーロッパには温度差があります。どちらかというと、日本は消費者重視に重点が置かれていますし、ヨーロッパは労働者保護に振れています。もちろん厳密な二項対立ではなく、あくまでも色味としてどちらよりになっているか、という意味です。

ANAやJALの機内サービスに慣れていると、ルフトハンザ、オーストリア航空、スイス航空、ブリティッシュエア等の機内サービスは驚きものです。エールフランス、アエロフロートなどは論外です。日系航空会社は客の求めているもの・サービスを察して提供しようとしていますが、ヨーロッパ系は決められたまずはマニュアル通りに提供し、それ以上のサービスは基本行わない、必要ならばはっきりと要求しなさい、というものです。客との対応も日本人からするときわめてドライで、要求しない限りそれ以上の要望は持ってないと判断する、という対応です。

スーパーマーケットの店員も全く同質で、品物がどこにあるのか質問しても表情も変えずに「隣の列です」程度の返答しかしません。レジの店員も同様で、客が挨拶しても無視、無表情でお金をやりとりする程度というのもありきたりです。飛行機のCAはたまには笑顔を見せますから、スーパーでは「ひょっとして人種差別ではないのか?」と悩むこともありました。でも、これはただ単に、CAは業務として笑顔をつくる訓練をやっており、スーパーではそれは求められていないからやらないというだけのことなのですね。店員からすると、誰に対しても同じように普通(無愛想)にやっているだけだ、ということみたいです。

郵便局の窓口の件については、さすがに「それはあんまりないけど、郵便局員だったらやってもおかしくないなあ」と現地の知人は言っていました。やはり、役所、公務員のような仕事はそれが目立つようです。しかし、終了時刻になったら窓口を閉めたとしても、誰も文句は言えない、とも付け加えました。決められた刻限までに提出できない客の対応を繰り返していたら、誰も時間など守らなくなる。必要な対応だ、と。

労働者は、自分の仕事を規定された範囲内で行う。無償の善意でそれ以上のことを提供しないし、また要求しないという原則が明確に確立しているのがヨーロッパです。日本では「お客様のために」多少無理をするのが期待されており、その期待に応えることが無言のうちに求められています。それが美談になることもありますが、働く人を疲弊させる一因にもなっているように思われます。

空港での乗り継ぎ失敗の件です。
オーストリア航空、ルフトハンザ航空に対して、私は恨み言を言いたい気持ちになっていました。困っている自分を助ける義務があるはずだ。乗り継ぎに間に合わなかったのは、飛行機が遅延したためだ。自分の責任はないのだから、当然じゃないか、と。
 実際その通りではありますが、実はここに論理の飛躍がありました。自分でも書いているとおり、飛行機の遅延は日常的なアクシデントです。決して特異な事故・事件ではありません。したがって、航空会社ではその対応を事前に決めてあります。だったら、飛行機に乗る前に自分で調べておけばそれで慌てずに対処できたわけです。むしろ、飛行機を利用するのだったら、そんなことはヨーロッパでは常識だったのではないか、と最近は考えています。事実、あの日がらんとした空港ビル内をとぼとぼとさまよっていたのは、私ぐらいなものです。笑 同じ便でウィーンから飛んできて、乗り継ぐことになっていたお客は私以外にもいたはずです。かなり大幅な遅延でしたから、次の便に搭乗できなかった可能性は高いのです。だから、彼らはわたしより手早く適切な対処を行って、必要だったら宿泊するホテルの手配もさっさとすませたと考えるべきでしょう。
 
ヨーロッパはごく狭いエリアです。彼らにとって、域内の移動は私たち日本人が国内移動するのとさほど変わらない感覚です。こんなのは、取るに足りないありふれたアクシデントなのだろうと思います。

画像3.jpg

しかし、わたしはこの程度のアクシデントに、いわゆる日本的な「フルサービス」の対応を求めたわけです。だから、航空会社の窓口が閉まっていることに腹を立てた。どうすべきかあらかじめ理解しておくのがここヨーロッパの常識だと知っていれば、別に腹を立てる必要はなかった。わかってみれば、簡単な話です。ロストバゲッジの空港職員やルフトハンザカウンターから出てきた職員が言いたかったことをまとめると、次のようなものだと思うのです。

「この程度の遅延は日常的で、航空会社の対応は決まっている。飛行機を利用するあなたはそれを知っているのが当然である。しかし、見るところあなたはそれをわかっていないようだ。だから今、自分ができる範囲内で手助けをしてあげます。しかし、いかにあなたが困っていようと、私は私が出来る範囲内でのみ助けるのであり、その困りごとが解決できるまで自分の職権を超えて無制限に手助けできるわけではない。私の提供できるヘルプで不十分な部分は自分で何とかしなさい。」
 
 消費者保護は重要でありおざなりにはできないが、労働者の権利も重要である。
その落としどころが、上述のようなあたりだと彼らは態度で示していると考えました。
日本だと、「客を放り出して自分だけ帰宅した」と非難されかねない対応です。しかし、ヨーロッパではあえてそちらに重みをおいている。まさに文化の違いです。

その結果、どのようなメリットが生まれているのかを次回でまとめます。


nice!(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

Facebook コメント

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。