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人生における労働の位置づけ 1 [日記・雑感]


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 オーストリアに長く住むようになって様々な違和感を体験してきましたが、生活の場面で遭遇することなので「そんなものか」でやり過ごしてしまうことが多く、あまり深く考えてきませんでした。
その中でも印象的な事例を二つほど書いてから、先に進めます。ひょっとしたら、すでに書いたこともありますが、論旨を進める上で必要なので、おつきあいください。

 一つ目は、妻の体験です。
あるとき妻が宅配便を受け取るために郵便局に行きました。日本では不在時には再配達という仕組みがありますが、こちらではそうした仕組みはありません。一時保管されている郵便局や委託されているお店に、自分が足を運んで受け取る仕組みになっているからです。受け取るための書類にサインする必要があって、窓口の脇のテーブルでその書類に目を通して、さあ書き込もうと思った瞬間にガーという音がしたのでびっくりして振り返ると、さっきまで開いていた窓口のシャッターが閉まっていたと言っていました。時間になれば容赦なく閉めます。笑 つまり、「決められた時刻になったから、もう受付はしない。また、明日来てね!」という意味なのですね。日本だったら、「もう受け付け終了時刻だから、明日来てください。」ぐらい入店時に伝えるはずですが、そういう対応もないのですね。

2つめは乗り継ぎ失敗の顛末です。

1.本来の帰国予定
  7月21日(土) オーストリア航空 OS155 ウィーン 17:40発
                    デュッセルドルフ 19:15着

  7月21日(土) 全日空 NH210 デュッセルドルフ 20:00発
                 成田       14:30着

2.実際の搭乗
  7月21日(土) オーストリア航空 OS155 ウィーン 20:00発
                    デュッセルドルフ 21:20着

  7月22日(土) 全日空 NH210 デュッセルドルフ 20:00発
                 成田       14:30着

つまり、帰国が丸一日遅れました。
どのようにしてこのような事態が発生して、どのような対処をしたのかは、以下の通りです。

21日(土) ウィーンでの搭乗は滞りなくできました。
わたしはもともとすべての行動に関して、余裕を持つようにしていますので通常通りです。
空港での免税品を購入することに関して、まったく関心を抱いていませんから、搭乗ゲート付近で空港の無料Wi-Fiにスマホをつないで、なんとなくネットサーフィンをしていました。

機内で着席するとき、夫婦連れの客から座席を交換してほしいと頼まれました。
22Aの夫が23Aの私と交換すると、なるほど二人が並んで座れます。同じ窓際同士であり、彼らも受けてもらいやすいと判断したのでしょうね。わたしは快諾しました。

22Bと22Cは若いドイツ人女性の2人連れでした。わたしたちのやりとりを見ていて、やさしいのね、というような表情で私にほほえんでくれました。これは印象的でした。
なぜかというと、オーストリア人の場合、このような状況では男女に関わりなくおおむね無表情でいることが多いのです。
別に冷淡というのではないのでしょうが、自分にとって関係がない出来事について関心を示さないのが通例です。特にウィーン市内では普通です。
したがって、今回のように自ら笑顔を向けてくることなどまずありません。
新鮮な驚きでした。
(しかも、20代前半のすごくきれいな2人だったのでなおのこと印象に残っています、
というのは、妻には内緒です。笑 ヨーロッパでも日本と同様に、きれいな女性はごく少数です。)

本題に戻します。

そんなやりとりのあと、わたしはぼんやりと外を眺めていましたが、雨粒が窓に目立つようになりました。そして、それはあっという間に激しい雨に変わりました。稲妻もきらめいていました。

機長から30分ほど離陸を遅らすとアナウンスがありました。
CAに乗り継ぎ便のチケットを見せながら、どうしたものだろうと質問はしてみましたが、
「どうしようもない。デュッセルドルフの地上職員に尋ねてほしい」という返答でした。

彼らの職権とは異なるものですから、予想された返答です。
しかし、万が一ぎりぎり間に合うかどうかのタイミングで到着したら、先に下ろして
くれることもあるから、ひとまず知らせておこうというのが動機でした。

しかし、その30分後には空港が閉鎖されて、離陸はさらに遅れるとアナウンスがありました。もはや乗り継ぎは絶望的です。

隣の女の子が話しかけてきました。
彼女たちはウィーンで休暇を楽しみ、これから自宅のあるデュッセルドルフに帰る
ところだと言っていました。

わたしが日本人であることはすぐにわかったようです。東京には友人が住んでいるとも言っていました。デュッセルドルフには多くの日本人が住んでいるので、日本人とは何らかの接点があったのかもしれません。
わたしのつたない英語でも十分にやり取りが続くくらい、彼女の英語は明瞭でわかりやすかったのを覚えています。

デュッセルドルフ到着後、彼女たちに別れを告げ、わたしはオーストリア航空のカウンターに向かいました。

しかし、誰もいません。

オーストリア航空に限らず、航空会社のカウンターには誰もいないのです。
いや、そもそも空港自体に人気がない。
到着便の出口に迎えの人たちがひとかたまりいるだけなのです。

しかたなく、インフォメーションに向かいました。
搭乗券を見せながら、どうすべきかを尋ねたところ、まずは機内預けのスーツケースを
AHSで受け取ってくださいと指示されました。後で調べたところ、ロストバゲージを扱う
部門のようです。今後どうすべきかもそこで教えてくれるだろうとのことです。

AHSでは、入り口のブザーを押すと、大きな台に搭乗券とパスポートを置くようにインターフォンから指示されました。
上を見るとカメラが取り付けてあり、わたしの顔とパスポートを照合していました。
中で再び搭乗券とパスポートを提示しながら、オーストリア航空の遅延により乗り継げなかった旨を伝えたところ、わたしのスーツケースを運んできました。
それを受け取り、今後どうすべきかを尋ねたところ、航空会社のカウンターに行けと
いう指示でした。
今行ってきたところだが、誰もいないと答えたのだが、指示は相変わらず「行け」です。
なんでもオーストリア航空の窓口業務はルフトハンザがやっているから、そこで対応してくれるはずだというのです。彼にとって、この対応はマニュアル通りなのでしょう。
言い争っても仕方ないので、再びカウンターに向かいました。

航空会社のカウンターには当然のごとく誰もいません。たまたまオーストリア航空の親会社のルフトハンザの職員が帰り支度を済ませて奥から出てきたので、これ幸いと尋ねました。これで何とかなる、とほっとしたのは事実です。今夜の宿と明日のフライト、一気に解決です。

この対応は、今でも一言一句思い出せるほど明瞭に記憶に焼き付いています。

彼は一瞬、同情めいた表情を見せた後すぐに笑顔に戻しました。
そして、
「そいつはたいへんだったなあ。まあ、明日カウンターが開く頃にまた来てくれ。ホテル?自分で探してくれ。なに、レシートを持ってきたら金は航空会社が払うよ。じゃあな。」
と、陽気に言い放ちました。

おいおい、天候による遅延は仕方ないかもしれないが、どうすべきかをアナウンスしたり表示したりすることもなく、客を放り出してみんな帰ってしまうなんて、ちょっとあんまりじゃないか、と怒りがこみ上げてきました。
しかし、今は怒っている場合ではありません。
今夜の宿泊場所と新たなるフライトの確保が最優先です。
しかたなく、先ほどのAHSで再び尋ねるしかないので、きびすを返しました。

途中、機内で隣にいた二人連れの女の子に出会いました。どうやらサンドイッチか何かで簡単に食事をしていた様子です。二人と少しおしゃべりをしました。今更急いでも事態は大きくは変わらないだろうと直感的に感じていましたので、むしろ落ち着いていました。
二人は、幸運を祈ると言って、手を振りながら去って行きました。彼女たちが本気で心配してくれたことだけでも、少し心が温かくなりました。
 AHSに戻ると、今回はパスポートと搭乗券の提示無しにすぐにドアを開けてくれました。
そして、
「カウンターはもう閉鎖されていたよね、明日の朝5時以降に来てくれれば次のフライトは取れるよ。ホテルは自分で取ってね。」
と、先ほどとは打って変わって笑顔の対応です。

笑顔はありがたいが、要するに、すべてDo it yourself なのだ。
長い夜になると観念しました。

これまでにもフライトの遅延で乗り継ぎがうまくできないことは、日本では経験してきています。飛行機の遅延はごく日常的です。天候が原因となる遅延などそのなかでもあまりにありふれています。
しかし、日本では到着した空港カウンターに行けば、どんなに不親切な対応であれ、次のフライトやその日の宿泊に関して手配してくれました。

ところが、今夜はそうはいかない・・・・・・・

「この近くのホテルは、どのあたりにあるのだろう?」
AHSの係員に尋ねてみました。
「2つほどあるよ。どちらも値段はほとんど変わらない。」
わたしの窮状を察してか、さっきまでのぶっきらぼうな応対とは打って変わり、ネットで調べてくれました。親身な気持ちが伝わってきました。

ありがとう、と礼を述べ、わたしは外へ出ました。
スーツケースとキャリーカートの2つを転がしながら、最初に目についたホテルの案内表示をたどって歩きました。

それは、Maritim Hotelでした。
受付の彼は端末をたたいたが、すぐに、満室です、と申し訳なさそうに答えてきました。近くに、Sheraton Hotelがあるので、そちらも試してみたらどうですか、と付け加えた。すぐそこですよ。

教えてもらったとおりに歩くと、Sheratonはすぐでした。しかし、ここも満室でした。

Maritimには、訊いてみましたか、と尋ねられました。だめだった、と答えたところ、受付の彼は自分が知っているホテルをあたってみようかと提案してくれました。
それはありがたい、とわたしはその申し出を受けました。
彼が探してくれたのは、空港からタクシーで12ユーロほどのところにある
ホテルでした。
「From Sheraton」
これだけで、次のホテルではすぐに通じて、323号室のカギを渡してくれました。
話が通じているというのはありがたいことです。

すでに23時半になっていましたが、まずはビールを一杯飲みたかった。
階下におりて、バーのカウンターで白ビールを頼みました。

画像4.jpg

空港に到着したのが21時半頃だったから、こうして落ち着くまでにほぼ2時間費やしたことになります。
ホテルのWi-Fiを使って、妻にskypeで電話をかけました。今夜の雷雨のために、妻の公演も中止になったとのことで、すでに家に戻っていました。

空模様がおかしかったので、みんなで「雨よ降れ」と祈っていたらしい。笑
今夜の公演が中止になっても、ギャラには影響がないから、そんな空模様ではやる気がなくなったようです。
おかげでとんでもない夜になったと、愚痴の一つも言いたかったのですが、その元気もありませんでした。

「ねえ、今夜のうちにANAに電話して、明日のフライトの予約をした方がいいんじゃない?」
妻は提案してきました。もっともです。

このまま眠ってしまうと、おそらく午前5時に空港カウンターに出向くのは体力的にかなりきつい。
しかも、デュッセルドルフから日本への直行便はたしか、今夜乗り損ねたNH210以外にない。

フランクフルトあたりで乗り継げば、便数が多いので早く帰れるかもしれないが、トランジットのために、空港の固いイスで2時間も過ごすのはイヤです。一回飛行機に乗ったら、まっすぐ日本に帰りたい。
それにわたしは日系の航空会社が好きす。長いことヨーロッパにいると、日本式のサービスに飢えてもいます。

筋から言うと、遅延したオーストリア航空を通して手配するのでしょうが、乗りたいのはNH210です。
方法は2つだ。
空港カウンターに行くか、電話で済ませるかです。
早朝から空港に出かけて、列に並んで、20:00発のフライトを取るのは悲しい。運良く取れたとして、夜までの12時間をどうするのだ。
またタクシーでホテルに戻っても、正午まで眠るなんて不可能です。それに、乗り継ぎ便を覚悟で出向くとしたら、ホテルから荷物を持っていくわけで、そもそもそんな選択肢などないです。
「わかった。そうしてみる。」
ビールを飲み終えると、わたしは部屋に戻りました。部屋でPCを起動すると、妻からメールが入っていました。ANAの連絡先です。
音楽家でありながら、妻はこういう実務がおそろしく手早い。感謝しながら、手順を考えました。
まずは、skypeにクレジットカードからチャージをしないと今の残高では足りないはずだ。
ANAにつながったら、次のフライトの予約とホテル台・タクシー代の精算手続きをどうするかを確認する必要がある。

結局、ANAの窓口に電話がつながったのは、1時間半後でした。
どうせすぐにはつながらないことはわかっていたので、浴室のドアを開けたままにしてバスタブで身体をのんびりと伸ばしていたとき、電話がつながりました。

おもむろにバスタオルを身体に巻き、窓口の人と話しました。やはり、NH210が一番よいことがわかりました。
本来は遅延した航空会社が次のフライトは責任を持って手配するのが原則だが、ANAでもできますから、すぐにやりますとのこと。
座席も電話後10分もすれば、ネットから指定できるとのこと。また、請求はオーストリア航空にすることになるらしい。

こうしてフライト予約が完了して、ベッドに入れたのは午前3時でした。
skypeの料金は、ほぼ400円くらいでした。この程度で日本の窓口とやりとりできたのは、実にありがたいです。
チェックアウトは正午なので、ぎりぎりまで眠る気になれば、8時間は確保できる。
ちょっとばかりホッとできたせいか、あっという間に眠ってしまいました。

目が覚めたのは、午前8時40分でした。
遮光カーテンの隙間から入る朝日で、気がつきました。最初は自分がどこにいるのか、わかりませんでした。予定外の宿泊だったから、自分の境遇がうまく受け入れられなかったのだと思います。

画像5.jpg

すぐに簡単に身支度を調えて、朝食のレストランに向かいました。入り口で21ユーロの伝票にサインを求められました。宿泊料76ユーロのホテルとしては、決して安くありません。
しかし、腹は減っています。昨夜はビールを飲んだだけで、何も食べていません。
入り口の係は、わたしが日本人だと気づくと、「おはようございます」と挨拶してくれた。
さすが日本人が多い都市です。すぐに見分けがつくようです。
ごく普通のビュッフェで1時間ほどかけてゆっくりと食事をして、部屋に戻りました。
それから、やはりゆっくりと風呂に浸かりました。温かい湯に浸かるのは、本当にうれしい。

荷造りをしてチェックアウトをしたのは、正午きっかりでした。
フライトは、20:00
余裕をみて荷物のドロップオフをしたとしても、18:00で十分だろうと見当を付けました。
その前にオーストリア航空のカウンターに行って、宿泊費やタクシー代の交渉をする。
となると、待ち時間を含めて、16:00に着いていれば余裕だろう。暇があれば、ビールを飲みながら、kindleでも読んでいればいい。

そんな胸算用をして、午後はホテルのロビーでのんびりと読書をした。
「市場は物理法則で動く」 マーク・ブキャナン 白揚社 である。
ロードス島のビーチでも読んでいましたが、ぶ厚い書籍なので途中だったのです。
このホテルの場合、ロビーではコーヒーやお茶が無料なので、居心地もいい。ロケーション的に宿泊客以外あまり出入りしないホテルらしく、鷹揚です。

ほどよい頃に、タクシーを呼んでもらいました。空港まではやはり12ユーロでした。

空港では、まず、オーストリア航空のカウンターに向かいました。そして、昨日の経緯を話しました。搭乗券を提示したところ、昨日の遅延を係員はすぐに確認しました。

これで請求についても滞りなく手続きが出来ると思いました。
しかし、です。
「このカウンターは、オーストリア航空のチケットは扱っているが、もともとはルフトハンザが委託を受けて処理しているだけだ。こうした請求はオーストリア航空のカウンターでないと、できない。」
笑顔ではっきりと言い渡されました。

では、そのカウンターはどこにあるのかと問うと、この近くではウィーンだと言われた。
もちろん、直接行かなくても、電話かネット上の問い合わせフォームから連絡を取ればそれでも大丈夫なはずだ、とも付け加えた。
どっと、疲れがこみ上げてきましたが、どうしようもありません。
とにかくありがとう、と礼を言って、ANAのカウンターに向かいました。少し早いが、すでにチェックインが始まっているのを先ほど見かけていたのです。

ANAの係員に尋ねると、請求はやはりオーストリア航空に直接行う必要があるとのことでした。
これから乗る帰国便が成田着だったので、そのときに成田にあるオーストリア航空のカウンターで手続きが出来るかどうかを調べてもらいました。
しかし、NH210が到着する頃には、カウンターには誰もいないというのです。
つまり、出発便の仕事が完了すると、カウンターは基本的に無人になるらしい。
したがって、ネット上の問い合わせフォームを通して、搭乗券やホテル・タクシーの領収書をアップするしか方法はないということのようです。

係員は丁寧にいろいろと教えてくれました。
それをまとめると、次のようになります。

(遅延のとき)
・遅延があったとき、原則として遅延を起こした航空会社が次のフライトの手配を
 してくれる。

・レガシーキャリアならば、原則として宿泊の手配もやってくれる。
 つまり、自分で手配したり、請求したりする手続きも不要である。

・しかし、今回のように、もはや出発便がないような時間帯に到着した場合、次のフライトを確保するためには、自分でオーストリア航空に電話をかけるか、わたしがやったようにANAに電話をする必要がある。
翌日、カウンターに出向いても悪くないが、座席に余裕のない便の場合、翌日では取れないことがある。

・請求手続きは、ネットを通して行う航空会社が非常に多い。非常に面倒である。

というようなものでした。

個人旅行のウィークポイントが如実に表れていると思いました。
遅延があった場合でも、航空会社の職員がカウンターにいる時間であればまだいい。
しかし、今回のようにその時間からずれてしまったときには、対応は全部個人が負わなければならないのです。

添乗員がついているツアーであれば、こんな苦労はしなくてもすみます。
多少空港で待たされるであろうが、ビールでも飲んで愚痴を言っていればいい。

しかも今回、ANAでも処理できましたが、これが外国の航空会社だったなら前夜に速やかに手続きをしたいとなったら、英語で電話をしないといけないのです。無理ならば、翌日カウンターに行くしかない。
こうした負担はたいへんに大きいです。

また、やはり英語が出来ないとたいへんに不便なのである。
個人旅行を楽しもうというみなさん、英語はしっかり勉強しましょう。(笑)
と、まあ、これでは、ありきたりの感想です。実は、前はこの程度の感想だったのですが、今は少し違った見方になってきています。そのあたりは次回にお送りします。




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